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2.3 高付加価値化製造業への転換
自動車業界、コンピュータ業界など米国の製造業は、高付加価値化生産方式に転換しつつあることが具体的な事例として今回初めて確認することが出来た。とくに、シリコングラフィックス社のスーパーコンピュータ、ワークステーションの最終組立工場を視察してその感を一層強くした。すなわちルーチンワークによる量産製品は、可能な限り単純化、共通化をしてから、信頼のできる外部企業から品質の良いものを安くそして早く調達できるようなサプライチェーンシステムを構築して、自社内では最終組立て/組付け生産ラインとエージングテストと最終テストに焦点を合わせたラインを構成している。ラインの長さは短いセル・ラインが相互接続されている。以上の内容をまとめると次のように表現できる。
(1)ロースキル
(2)イージーオペレーション
(3)ショートライン
(4)高品質なサプライヤとのパートナシップの構築
(5)商付加価値化プロセス編成
などとなる。このようにすることによって、生産ラインが技能レベルが低くても十分通用するように配慮されているので、教育レベルの低いしたがってレーバー:コストの安い労働者によっても十分に運用できているようである。一般に言われているように、米国の平均賃金が低下しているのは、飲食業、サービス業などに負うところが多いという分析は、このような製造現場の変革を見落としているように考える。
2.4 米国製造業の品質向上のシナリオ
米国製造業の品質向上の努力は、MB(マルコム・ボールドリッジ)賞の設定など国を挙げて品質改善活動を実施していることは内外で知られている。しかし、今回の企業訪問で認識された内容を検討してみると、我々が今まで認識していた内容と少し異なることがわかった。すなわち、日本流では品質の作り込みをベースにしているため一定の成果が出るまでにはかなりの時間がかかる。この欠点を補うために考え出された方法が、製品設計時にサブライヤとの組み合わせを考慮して、その部分の大部分の信換性を、調達先のサプライヤの信頼性に全面的に依存できるように構成されているのである。
このようにすることによって比較的短期間に、しかも作業者をあまり訓練しなくても、当初の品質を保証できる方式を確立しつつあるということである。
2.5 米国製造業のCALS導入の現状
米国製造業のCALS導入は、日本と違ってエンタープライズ・ユーザー・ドリブン(企業主体の自主活動)になっているので、商務省の権進するCALSに対してはあまりホットになっていない。し

 

 

 

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